申錬鐵著『養豚経営の展開と生産者出資型インテグレーション』が日本農業経営学会賞奨励賞を受賞 2017/09/15

2017年9月14日から3日間にわたり九州大学の西新プラザ・伊都キャンパスで開催された2017年度の日本農業経営学会において、申錬鐵氏が学会賞奨励賞を受賞しました。

著書『養豚経営の展開と生産者出資型インテグレーション』は、博士論文をまとめたもので、家族養豚経営が多様なかたちで展開している実態に注目し、その中での生産者出資型インテグレーションと位置づけた経済システムと家族養豚経営の展開についての関係性を解明したものです。


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韓国における農協販売事業についての調査 2017/09/08~17

協同組合のレーゾンデートル研究室では2017年9月8日から17日まで韓国の農協販売事業についての現地調査を行いました。この調査には北海道大学の坂下明彦・朴紅、申錬鐵・黄成壹・峰尾光人、弘前大学の正木卓の6名が参加しました。

韓国では農協中央会の組織・事業再編と同時に、農協の販売事業の強化・拡大をめざしています。中央会主導の連合事業団方式から始まり、現在では組合共同事業法人の設立が進んでいます。北海道でもかつては広域販売事業連合会がマーケティング戦略のひとつとして考えられました。しかし、現在では農協合併によりほとんど存在していません。こうした経験も踏まえながら今回はさまざまなタイプの農協の動きを調査しました。対象農協は、全羅北道の茂朱郡・南原市、慶尚南道の晋州市、江原道の春川市・平昌郡の連合事業団および組合共同事業法人であり、それぞれの設立経緯と販売事業展開上の特徴等について聞き取り調査を行いました。

中央アジア キルギス現地調査 2017/08/20~31

JICA北海道(札幌)の中央アジア地域農民組織強化研修の一環として、キルギスの農協の状況把握と助言のために、坂下明彦・中村正士・星野あかり(北海道大学)、高橋義博(元長沼農協職員)、野村潤也(ロシア語通訳)の5名は、8月21~29日の9日間、キルギスを訪問しました。2013年、2016年に次ぐ3度目の現地での研修・調査です。

最初の4日間は首都ビシュケクに宿泊しました。緯度はほぼ札幌と同じで、毎日が気持ちの良い快晴、至る所に用水路があり水が豊富に流れ、大通公園のような公園がある親しみのある街です。JICA事務所への挨拶から始まり、農業食糧省の農協開発発展課やキルギス国立農業大学、キルギス協同組合連盟(Cooperative Union of Kyrgyzstan:CUK)への訪問の後に、農協関係者を集めた2日間にわたるフォーラムを開催しました。北海道の農業の概要から、農協の歴史的発展の話、日本の農協の営農指導、農協の組織化の話などの講義を行い、その後CUKなどの現地の農協関係者の事例発表を行いました。最後には、テーブルを囲んでディスカッションが行なわれ、「女性の組合員の活動のアドバイスがほしい」「いくつかの州から集まっている農協はどうしたらうまくまとめられるのか」など積極的で具体的な意見・質問が飛び交いました。

25~28日はCUKのタライ氏とミラント氏の同行により、イシククリ湖を南側から一周するコースでその周辺の農協を訪問しました。中央アジアを対象とした農民組織のコースは約20年続いています。研修生OBはそれぞれが独自に農協活動への挑戦を行っており、その伝手をたどり調査先を選定しています。今回はコチコル・ロジスティック農協、イシククル有機農協、イチュケスー農協、バグレンツーヴォ農協の4農協を訪問し、それぞれ2時間ほどの聞き取り調査と視察を行いました。

キルギスは中央アジアのスイスと呼ばれているように標高の高い所が多く、首都のビシュケクでも800m、アラトー山脈を抜けて最初にいったコチコル市でも約1,700mあり、調査は少し息苦しいような気がしましたが、無事予定通り終えることができました。内容については報告書で詳しく触れようと思います。今回の調査で印象に残っているのは、家畜の群れを見たことです。農家は夏に耕地で自給用・販売用の小麦やジャガイモ、冬の家畜飼料を育て、その間家畜は村でまとめて数十~数百km離れた共有の自然草地(ジャイロ)へ連れて行っています。家畜の群れと馬でそれを操るキルギスの若者を間近で見て、食物を生産する営みの違いを実感しました。

ビシュケクにもどり、JICA事務所ならびにCUKと今後の活動についての意見交換を行い、北海道と類似点の多いキルギスの農業発展のために、研修を続けること、そしてその内容をより具体化させることなど、今後も力を入れていく方向で話し合いは進みました。

(星野あかり)

中国の有機野菜の加工工場を再訪問 2017/08/08

協同組合のレーゾンデートル研究室ではアジアの農協や農家の組織化について調査を実施しています。その一環として、高慧琛氏が中国山東省博興県にある有機野菜加工工場(龍昇食品有限公司)を再訪しました。

龍昇食品有限公司は、設立の初期には興福農場の範囲内の農家と契約生産を試みました。会社は生産計画のもとで、契約農家あるいは地元の栽培専門家と委託契約を結び、収穫後に買い入れするという中国の沿海地域で一般的な「企業+農家」協力方式を採用してきました。しかし、有機農業の基準がより厳格になり、契約農家に対する管理コストも一層高まっており、有機農産物の汚染事件も発生したため、会社は契約方式あり方を変化させています。今後、今回の補足調査結果をまとめて論文化する予定です。

栗山町での農家泊まり込み実習を実施 2017/07/08~11

当研究室は協同組合学研究室とともに、学部2年生(27名)と韓国からの学部留学生(1年間、2名)、計29名を対象として、栗山町において農家泊まりこみ実習を行いました。実習期間は7月7日(金)から9日(日)まで、2泊3日間でした。これは1997年から実施されているもので、今年で20年目になる歴史の長い実習科目です。

7日(金)は9時に大学院生の引率の下で、栗山交通の貸し切りバスを利用して栗山町役場まで移動しました。10時半からは栗山町農業振興公社で1時間にわたって農家のお話を伺いました。今年は栗山町農業振興推進委員会の藤井吉美会長より、栗山町農業についてのお話を聞くことができ、参加学生からの質問とそれに対する答えを頂きました。

12時40分からは受け入れ式がありました。町産業振興課長の高間嘉之氏から栗山町の紹介を兼ねたご挨拶を頂きました。その後、迎えに来られた農家・農業生産法人のみなさんに同行して、1日半の泊まり込み実習が始まりました。

今回の受け入れは10の農家・農業生産法人であり、北大農経出身者も含まれています。

参加学生は8日(土)の夕方まで各農家・法人で実習を行い、夕方には農家の皆さんおよび栗山町の関係者と一緒に町内の焼肉店で懇親会を行い、農家と学生間の交流を深めました。宿泊は栗山町農業振興公社が管理・運営している新規農業就業者のための宿泊施設をお借りしました。

9日(日)には、離農の多発で遊休地化していた栗山町桜丘ハサンベツ地区を、自然と農業と人とが共生する里山、ふるさとの川として再生する取組みを展開している「ハサンベツ里山プロジェクト」の月例会に参加しました。午前中はハサンベツ川の洪水防止のための小堰堤(砂防ダム)を3つ作る作業に汗を流し、午後からはプロジェクトの代表である高橋慎氏の案内で活動内容を紹介頂きました。

今年の農家泊り込み実習は最も暑い期間中に行われましたが、事故もなしで無事に終了することができました。受入農家・法人、栗山町関係者のみなさまに、この場をお借りしてお礼申し上げます。


JA新はこだて知内支店での講演を実施 2017/06/30

JA新はこだて知内支店からの依頼により、2017年6月30日に行われた2017年度第1回南渡島地区担い手養成講座において当研究室のスタッフである坂下明彦氏が基調講演を行いました。

基調講演のタイトルは「作目別生産部会の役割-生産者と農協活動を結ぶ要-」であり、まず、北海道における農協生産部会の形成について紹介しました。ここでは、組織化の様相を施設利用部会型(十勝から米地帯へ)と作目別生産部会型(網走から野菜地帯へ)と分け、それぞれについて説明をしました。

続いて、独禁法の規制強化と部会については、土佐あき農協を事例としながら、公取の取締強化について言及しました。

基調講演の終了後には、「農協事業および地域振興の課題整理」をテーマとするワークショップが行われました。ワークショップの内容は、基調講演をもとに、農協の役割やそれによる地域振興の在り方について参加者全員で課題整理を行うことで、これからの地域農業の担い手層に参加者自身が日頃感じていることや今後の展開方向を整理し示してもらうことが目的です。このワークショップのコーディネータは弘前大学の正木卓氏が担当しました。

大学院共通科目「アジア農業協同組合論」を開講 2017/05/15~07/03

協同組合のレーゾンデートル研究室では2017年前期活動の一環として大学院共通科目「アジア農業協同組合論」を開講しました。この授業は、規制改革路線のもとで戦後の自作農体制とそれを支える農協の存在を否定する議論がめだつ中で、農業と地域経済の持続的発展のためには家族経営の存続が不可欠であり、それを総合農協が支援するという体制はむしろ日本を基点としてアジアおよび世界に広く普及しているという観点に立っています。

そのため、この授業では、日本のモデルとなったドイツ等ヨーロッパとの比較の視点で、日本を含む東アジアの総合農協(韓国)の組織・事業・経営の特徴を明らかにし、市場経済移行国(中国、ベトナム、中央アジア)でのその可能性を探り、アジアにおける総合農協の意義を示すことを目的としています。


講義の内容と担当者は以下の通りです(各2コマ)。

5月15日:アジアにおける農協の展開とその論理 坂下明彦(北海道大学)

5月22日:源流としてのヨーロッパの協同組合 小田志保(農林中金総合研究所)

5月29日:韓国-東アジアの総合農協 申錬鐵(北海道大学)

6月5日:北海道-北海道農業の商品化と協同組合 正木卓(弘前大学)

6月12日:ベトナム-輸出野菜産地と農協 高梨子文恵(弘前大学)

6月19日:中国-有機農業と農村合作社 高慧琛(北海道大学)

6月26日:日本-総合農協の出生と軌跡 小林国之(北海道大学)

7月3日:キルギス-中央アジアの農協 坂下明彦・中村正士(北海道大学)

「中央アジア地域農民組織強化」コースを実施 2017/05/08~05/31

JICA北海道(札幌)の研修として、中央アジアのカザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタンからの7名が北海道で5/8~31の約1カ月の研修に参加しました。坂下明彦氏は長期にわたり「中央アジア地域農民組織化」コースのコース長を努めており、農協論の講義の他、視察やアクションプランの作成指導を行っています。

どの国も共通して、土地改革後の小規模農家への融資が少ないこと、農業技術の普及体制が整っていないことなどが農業発展の前に立ちはだかっています。法律の専門家、商工会議所、地域の試験場など研修生の専門は様々でしたが、それぞれの視点で日本の農協のシステムから発想を得て、アクションプランを作成していました。

韓国において農村調査及び農協調査を実施 2017/04/20~05/09

協同組合のレーゾンデートル研究室では2017年4月20日から5月9日まで韓国の農村調査及び農協調査を行いました。この調査には坂下明彦・朴紅・申錬鐵、北海道武蔵女子短期大学の松木靖、弘前大学の正木卓の各氏が参加しました。

調査地は江原道春川市泉田里で、泉田里は1990年代から協同組合研究室が定点観測的に農村調査を行っているムラです。今回の農村調査は10年前に行った農村調査の追跡調査として行われたものです。調査後には泉田里の農家との交流会を開催し、その場には江原研究院の李榮吉氏、江原大学農業資源経済学科の高鍾泰氏も参加し、農家との親睦を深めました。

その後、申錬鐵氏は5月9日まで「韓国における農協中央会の事業構造再編と単位農協への影響」をテーマに韓国の農協について調査しました。まず、農協中央会と韓国農村経済研究院、協同組合研究所を訪問し、農協中央会の事業構造再編の経緯と展開についての調査を行いました。また、江原道鐵原郡の金化農協を訪れ、農協の概要と農協中央会の事業構造再編による単協への影響について聞かせていただきました。今回の農協調査結果は次年度の調査結果とあわせて論文化する予定です。


レーゾン市民講座「食にとって農協は本当に必要ないのか?」 第5回·最終回「ワークショップ」を開催 2017/3/22

第5回市民講座が2017年3月22日(水)13時30分から北大農学部5F中講堂で開催されました。今回の市民講座は4回の学習を経た参加者と講師との対話·参加者同士の対話を深め、参加者みなさんの本講座や農協に対する意見を「市民による農協の再発見」として受け止めることが目的です。そのため、ワークショップのかたちで実施しました。参加人数は登録13名のうち11名でした。

まず、坂下明彦教授より第5回ワークショップの開会宣言があった上、当研究室の申錬鐵特任准教授より今までの4回の講義の振り返りがありました。その後、吉田省子客員准教授よりワークショップの手順説明が行われました。

本番である専門家との対話付きワールドカフェは吉田省子客員准教授が司会を担当しました。第5つのラウンド(各ラウンド18分)で構成され、第4ラウンドまでは4つに分けられたグループが4名の講師のテーブルをに循環しながら対話を行い、最後の第5ラウンドでは自分の考えや意見を参加者同士で述べ合い、全員スピーチのため準備を行いました。

最後には、参加者全員から市民講座や講義内容に対する感想や意見等についてスピーチをしていただき、その内容を①情報発信の必要性、②農協改革の背景と対応、③事業の必要性と課題と構造化しました。その後に、全体講評とともに参加者全員に修了証書を渡しました。

ワークショップでの議論内容等々については、今後報告書として取りまとめる予定です。